未開封CDの箱から取り出して聴いたもの。
○20世紀の偉大な指揮者たち~フルトヴェングラー(EMI)

[CD1]
・ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
ウィーン・フィル(1953年9月4日、ヘルクレスザール、ミュンヘン)
・ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」第1、2楽章
[CD2]
・ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」第3、4楽章
E.ベルガー、G.ピッツィンガー、W.ルートヴィヒ、R.ヴァッケ
ベルリン・フィル&合唱団(1937年5月1日、クイーンズ・ホール、ロンドン)
・ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
ベルリン・フィル(1944年2月7日、国立歌劇場、ベルリン)
「合唱」は戦前の録音で、クイーンズホールでの英王ジョージ6世戴冠記念コンサートのライブ録音で20年くらい前にEMIから初めて出て話題になったもの。ただし、2枚に入れるため、第2楽章のスケルツォの1回目の部分の繰り返しをカットしている。を「英雄」「運命」もこの録音は持っていなかったので、バーゲンに出てたので購入。ただし、「運命」は録音データに疑問があるようで、1943年6月の(旧)フィルハーモニーでの録音(各社から発売されている)ものと同一らしい。
これでこの指揮者による「エロイカ」6種類、「運命」7種類、「合唱」6種類くらい持っていることになるわけだが、今の自分はどっちかというとフルトヴェングラーのベートーヴェンには手が伸びなくなっている。これが、ブラームス、R.シュトラウスだと違和感は覚えないのだが、ベートーヴェン、ブルックナーは聴いて「?」と思うことがしばしば。
昔の青年が社会主義に一度ははまったように、クラヲタも一度はフルトヴェングラーにはまる時期を経るということか。
このセットの中で一番違和感なく聴けたのは「エロイカ」で、録音の状態がいいテープが発掘されたこともあって、また聴衆の入った演奏会の録音なのに雑音が少なく聴きやすい。演奏の傷はあるものの、1944年の通称「ウラニアのエロイカ」を思わせる熱演。特に第1楽章のコーダ。
「合唱」は前に出ていたものより、録音状態はよいがそれでも音楽の流れをたどるのにやっとというくらい。当時としては合唱付の大編成の曲をライブで録音するには、努力してもこれがやっとだったのだろう。こんなことを書いたら熱烈フルトヴェングラー・ファンのお叱りを受けそうだが、ベートーヴェンの交響曲第9番はフルトヴェングラーで聴くと今違和感を覚えるものの1つである。第3楽章のアンダンテの部分はとてもAndante moderatoとは言えない超スローテンポで、第4楽章はテンポが自由に伸縮する演奏スタイルにより下手をすると取りとめがなく曲想が変わっていく音楽になりかねない構成なのが、さらにデフォルメされた冗談のような音楽に聴こえてしまう。(ついでに「バイロイトの第9」は演奏に傷が多く、初心者も想定した「名曲名盤○○選」のような企画で、まっさきににこれを推薦する習慣も、もうそろそろやめてはどうか。第9交響曲に親しんでから、20世紀の演奏史の旅としてとして聴くべき演奏だと思う。)
「運命」はライブ録音であるが、聴衆なしの放送用録音なので聴きやすい。第3楽章から第4楽章への推移、第4楽章のコーダは、この指揮者ならではの名人芸であるが、第2楽章はAndante con motoとは少々遠い世界であるのが残念。
で、比較のため未開封のこちらも聴いてみる。
○モントゥー・ベートーヴェン交響曲全集(DECCA)

・交響曲第1~第9番
・「フィデリオ」序曲 作品72b
・「エグモント」作品84-序曲
・「シュテファン王」作品117-序曲
ピエール・モントゥー指揮、ウィーンpo.(交響曲第1,3,6,8番)、ロンドンso.(左記以外)
エリザベート・ゼーダーシュトレーム(ソプラノ)、レジーナ・レズニック(アルト)、ジョン・ヴィッカース(テノール)、デイヴィッド・ウォード(バス)、ロンドン・バッハ合唱団(交響曲第9番)
[特典盤]
交響曲第9番リハーサル風景
ラ・マルセイエーズ(フランス国歌)リハーサル風景
ピエール・モントゥー(1875~1964)の生誕130年記念ということで、2005年に発売されたもの。第9番はWestminsterから出ていたもの。
既にいくつか持っていた音源もあったが、セットなので買ったはず。
こちらをあらためて全部聴きとおすと、曲によっては演奏者の名前を伏せて聴かせれば、いわゆる「ピリオド・アプローチ系」の指揮者、団体を挙げてしまいそうな演奏で、とても1958年~1962年に録音されたものとは思えない、ロマン趣味、ベートーヴェンを「楽聖」とまつりあげるようなものとは遠く軽快な演奏で、よくある第2主題でテンポを緩める、というのもなし。また慣習的オーケストレーションの変更もほとんどみられず、楽譜どおりだと音の欠落に聴こえるようなところもそのまま楽譜どおりに演奏されている。
特に「エロイカ」が、先日NHKBS-hiでやっていた歴史ドラマ「“英雄”~ベートーベンの革命」を録画しておいたのを見たばかりだったので、なおさらウィーン・フィルが古楽オーケストラのように聴こえ、ベートーヴェンの時代におけるこの音楽の革新性がよく浮かび上がってくる。
今の自分の好みはこっちであることは明らかであるが、モントゥーはフルトヴェングラーより約10年早く生まれているのだが、演奏スタイルの違いに驚くとともに、なぜこの違いはと、考えてみる。