東ドイツ時代などのテンシュテットのベートーヴェン(WEITBLICK)
東ドイツ時代のテンシュテットは不遇だったようで、レコード録音もごくわずかしかないという話であったが、その数少ない録音と、1971年西側へ亡命して最初のポストを得た(1972年)キール歌劇場管弦楽団との演奏、ということで興味を惹かれ購入。
ベートーヴェン:交響曲第1番(*)、交響曲第5番、「エグモント」序曲
クラウステンシュテット指揮シュターツカペレ・メクレンブルク(*)、キール・フィルハーモニー
録音:1968年4月19日(*、スタジオ)、1980年3月20日(ライブ)
交響曲第1番はシュヴェーリン (メクレンブルク・フォアポメルン州の州都)にあるシュターツカペレ・メクレンブルク との演奏で、テンシュテットは1962~69年にわたって音楽監督を務めていた。スタジオ録音なのか意外にも(?)にも落ち着いたアンサンブルの崩壊もないもので、ライブを「草書」にたとえると「楷書」の演奏。荒れ狂うテンシュテットを期待すると肩透かしを食うこととなるが、もちろん若いベートーヴェンの音楽にある高揚は十分に表現されているもの。
キールでの演奏はは世界各地で名声を得たテンシュテットが西側での再スタートの地にやってきたもので、それもあってか交響曲第5番、「エグモント」序曲は、コーホー先生語だと「アシュラのごとき迫力」とでも言うべきものである。キール・フィルは上手とは言えず、人数も少ないようで(テンシュテットの演奏スタイルであれば、ベートーヴェンであってもフルサイズの16型、14型のオーケストラがふさわしいだろう)、オーケストラの練習に入って聴いているような妙なナマな音がしてくる。金管楽器は強奏しまくりで、随所でアンサンブルが崩壊している(交響曲の第4楽章、序曲のコーダの加速はすさまじいが、これは指揮者が加速しているのか、いっちゃったオーケストラが走っているのかわからない状態だ)。しかし、これもコーホー語をつかうとテンシュテットは「こうでなくては」で、決して初めてこの曲を聴く人には勧められないが、麻薬のような魅力を持った演奏である。